合田佐和子展 帰る途もつもりもない2023年02月06日

喜びの樹の実のたわわにみのるあの街角で出会った私たち
もう帰る途もつもりもなかった (合田佐和子 晩年の手稿より)

三鷹市美術ギャラリーにて「合田佐和子展 帰る途もつもりもない」が開催されている。没後初にして過去最大級の回顧展というだけあり、作品もオブジェ、絵画、写真、イラストレーション、資料他、約300点。会場をまわり作品をじっくりと見ること1時間半以上。

美術評論家の瀧口修造氏の勧めによりオブジェ作品を発表したという。針金や蒐集された素材による「Watch - Angels」「バッカスの祭」

「焼け跡となった市街地で見た、溶けたガラスや石などに魅了され…空襲の焼け跡での宝物拾いから始まった」

唐十郎や寺山修司「状況劇場」「天井桟敷」のポスターや原画
「鐡仮面」 劇団状況劇場(1972)他、多くのイラストなど。
それらを見ていると昭和の頃のパルコのポスターや、今は見る影もない周辺の文化的な風景が懐かしく蘇ったりする。そして、子供のころ私の本棚に江戸川乱歩シリーズ 「怪人二十面相」や「鉄仮面」という児童向けの書籍があったのを思い出し回想したり…小学生の本棚、他の本の中に何故それがあったのだろう?とか。

木箱入りの石などのオブジェ…箱の中にちりばめられた小さな世界。ジョセフ・コーネルやマルセル・デュシャンなども手掛けていたBox Artはいくつも見てきた。レベル違いだが私が小学生だった頃、小さな缶や綺麗な箱に自分の好きな石や羽を詰め込むのが好きだったな…なんてふと懐かしい思いに浸ってみたり。

顔があるオブジェ人形やタマゴ、蛇、手や足などの女性のパーツ、ミュータント…。

そして、エジプト移住後の青い目シリーズ 「青いまなざし(リリアン・ギッシュ)」
瞳の持ち主でサイレント映画時代に活躍したポーラ・ネグリはヴァンプ(悪女)役で、彼女にもまた物語が…。「ポーラ・ネグリの眼」「90度のまなざし」

永遠の少年少女のための妖しい童話 「雨月の使者」という唐十郎の本の表紙や、小林麻美の「雨音はショパンの調べ(EP)」のジャケットを描いていたことは知らなかった。

これだけ私の好きなものが並んでいて回想できる展覧会も、生きている内に中々見られないよねと、最後までひとりワクワク・ウキウキしてまわっている自分が可笑しかった。あの時代の周りの空気感や香りが漂ってきそうなくらい…いろいろな想い出が蘇ってきた貴重な時を過ごした。

「合田佐和子展 帰る途もつもりもない」(三鷹市美術ギャラリー)
https://mitaka-sportsandculture.or.jp/gallery/

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