競走馬だった馬で馬術の練習2021年02月15日

競走馬だった馬で馬術の練習
馬場でのここ最近の相棒の写真。
2012年生れのサラブレッド(せん馬)、今年9歳になるとても元気な馬だ。

反応がすごくよいので、始めの数回の騎乗ではわずかな脚の合図のずれでビュンと駈歩を始められてしまったり、脚でなくかかとの方がちょっとでも当たってしまったり、合図が駈歩でもないのに少しだけ後ろにずれてしまった(手綱は張っているのに)時などは、耳を立て振り返り「今のは何ですか?」というようにジロリと見られた。

それからは、こちらも周りに何か影響のあるものがないときは、耳の動きを見ただけで「ゴメン、私の脚が悪かったですハイ」と反省することしばしば。とても緊張感のあるよい先生である(笑)

手綱を少しずつツメて頭を安定させハミを取らせるが、強くも弱くもない加減が中々つかめなかった時期などは、張った手綱が少し緩むだけで歩度がグンと伸びてしまった。つまり折り合いさえつけば推進だけはオートマチック的にいくのだが、他の馬にはあまりない早い動きの中で自分のバランスを保ち、馬の動きについていくという多様な判断に自分がついていけないという状況を久しぶりに体験することになった。

馬に乗るというのは、かなりのマルチタスクである。
本日の馬の状況(緊張していないか、リラックスしているか、足は痛めていないかなどなど)、自分の体幹バランスがずれていないかは基本。

ただ馬に乗せられて馬場をまわる(乗馬)というのであれば別だけど、馬術の練習をする以上はきれいな図形運動ができるように、早めの指示で的確な強さの脚の扶助ができるか、それに伴う手綱の動きも逐一変わる。プラス同じ馬場では他の人馬もフリー騎乗している。突然止まる馬もいたり、まわりの森の中から鳥が飛んでくることもしばしば。

車の運転がマルチなのはわかると思うが、相手が動く生き物であることでそこに本日の気分まで入ってくる。よく人を見るというけど、馬場の中ほどに行けばさぼれると思う馬、今日はなんとなく動けばいいやとでも思う馬もいるので騎乗中は自分に集中させることも求められる。それもけっして鞭などの力ではなく…。

乗馬倶楽部には色々なところから馬がやってくる。大学の馬術部、他の乗馬施設、競走馬が乗用馬に、自馬としていた人が手放して練習馬になるものなどなど。そしてこちらも馬に乗り続けるのは筋力や体力と体幹維持のため、競技会で上位を狙うなどということもないので、いろいろな馬に乗せていただく。

この馬は調教はしているとはいえ、つい数年前まで(福)や(M・デ)も東京や中山で騎乗していた馬らしく威勢がよい。でも性格はとても穏やかでフレンドリーでかわいいやつだ。そして、騎乗後には鞍を外すのも待っていられないくらい厩舎に走りそうになる食いしん坊(笑)

馬術の動きを人馬共に練習するには、集中させながらもゆったりとリラックスした動きの継続ができることと、私が正しい扶助と合図で柔軟性を導きながら繰り返しの練習を続けるのみだな~しばらくはお付き合いしてもらうことになりそうだ。

ちなみにせん馬とは去勢した雄の馬のことで、人間の都合であるらしいが気性の荒さに関係する男性ホルモンの分泌が抑えられることで折り合いをつけやすくなったり、余計なエネルギーを使わなくなるらしい。
そのせいか疲れやすくなることもなく、ケガも少なくなるとか。
人間だったらどうなんだろうなんて想像してしまう(笑)

乗馬ではなく馬術の練習をするべく馬と過ごす日々はつづく…。